商標問題のスペインUDONという企業とは?日本の競争力の将来を考える

宵宵祇園バルセロナ_石塚氏

スペインで「UDON」という表記が許可無く利用できない?

ここ数日の間、スペイン在住の日本人の経営するうどん店が「UDON」という表記を使えずメディア等で騒がれているのをご存知でしょうか?

事の発端は、バルセロナで本格うどん店を経営する、石塚さんがSNSに掲載した記事。「UDON」という表記を使うな、看板等から削除しろ、今後一切メディア等で「UDON」という名称を使うな、として、弁護士から通達があったという事件が発生しました。

Facebook等のSNSには「おうどん」にすれば?きしめんは?といった回避策についてコメントがなされている様子で、メディアに露出することで今回の事実を多くの人に認知してもらおう、という流れがあるようです。どんどん広まるべきであると私自身もアグリーです。

権利侵害だ!と言ってきた”UDON”という企業とは?

すでに2004年からバルセロナには「Udon Franchising SL」という企業がUDONというアジア料理を取り扱うフランチャイズ店を展開する企業が、商標を登録した上で他店舗展開しており、バルセロナだけでなくマドリー、バレンシア、イビサ島などにも店舗展開を進めている企業です。

UDONチェーン店の展開

UDON企業概要

 

ここには掲載がありませんが、東アジアの料理に目をつけたスペイン人が、ファーストフードのフランチャイズとして他店舗展開を進めています。会社自体の登記は2004年にさかのぼる、という事で、当時はUDONがスペイン(またはEU)であまり認知されておらず、トレードマークとして認定した可能性がある点は容易に想像できます。

このUDONの店舗ができてまもなく、当時はプラサ・カタルーニャ近く(確かFnacの一角だった記憶が)にあったUDONでうどんを食べたことがありますが、その時は憤りを覚えるのみで、こんなものを日本食として変に認識されたら困る!という思いだけが残りました。味がなく、おそらく今思い返すとしっかりダシが取れていない、そもそも知らないんじゃないか、と思うほどのものでした。

Webを見てみると、フランチャイズでお店を開いてよかった!という、日本でいう「らあめん花月嵐」のテーブルのパンフレットにありそうな、各店舗のオーナーの声みたいなページもあります。

UDON_チェーン店の店長さん

▲”はじまりは客として、でした。サービスの気配り、コンセプトのオリジナリティーに強く共感した”と語るのは、マタロ(Mataró)にある店舗のオーナーさん。

 

UDON_チェーン店の店長さん2

▲”レストランをオープンするため、少し違ったユニークなコンセプトを模索していました。沢山の選択肢がありましたが、UDONに決めました。プロフェッショナルな環境は非常に目を見張るものがありました”と語るのはサン・クガットの店舗オーナー。

 

もう皆さんおわかりかと思いますが、日本食を広める、というアプローチよりも、フランチャイズとして少しユニークなプロダクトを展開することができますよ、というコンセプトで走っている企業のようです。フランチャイズというシステムはビジネス上非常に特筆すべきものではあると思いますが。

どんなメニューが展開されている?

現在Webに掲載されているメニューを見ても、開店当初から多少の進歩はあったのかもしれませんが、ツッコミをいれずにはいられないメニューのラインナップ。簡単に見ていきましょう。

パッタイ

▲いきなり来ました。”パッタイヌードルズ”。うどんはおろか、日本から離れてゆきました。

かしわそば

▲柏そば。柏と言えば千葉の”渋谷”と言われる都会なので、それにあやかったのかもしれません。

カレーラーメン

▲カレーラーメン。まだ日本でも試したことはありませんけど。

たんぽぽラーメン

▲まぁ、、、食用のたんぽぽとかもあるので・・・

チキン・タイフィンガーズ

▲チキン・タイ・フィンガーズ。タイ風ソースで頂けるようです。

さいころ豆腐串

▲豆腐ブロック串。ハーブも使って包んであるようです。

どこが違うのでしょうか

▲日本食かどうか、ではなく、ネーミング他に無かったのでしょうか。。

グリーンロール

▲なんと創業明治23年の老舗、高岡屋の海苔を使っているそうです。Mottainai。

丼もの

▲丼ものメニューの全4品。子が行方不明の親子丼、具だけに見える野菜カレー、カツonライス、KAREE RAISU。値段はユーロ表記ですが、おおよそ1,200円から1,400円といった所でしょうか。

デザート

▲最後にデザート。バナナ&チョコはそれはそれでクレープみたいなので、ヨーロッパでは好まれそうな気もします。

こうしてメニューを見ていると、当然ですが日本食を知る人が商品企画をしているわけではなく、あくまで物珍しさで差別化して店舗開けるよ、というアプローチのようです。(そもそもうどんが少ない)

世界遺産にもなった日本の食文化拡大の障壁になりうる?

郷に入っては郷に従え、ではありませんが、海外(スペイン含む)でのビジネスにおいて、現地の企業が比較的守られるのは当然の成り行きなのかもしれません。TPPなど日本でも議論のテーマになっていますが、関税や制限により、日本の農家をはじめとする経済圏を守る必要があります。

しかし、日本食の一部である和食が世界遺産として登録されているにもかかわらず、今回の「UDON」のトレードマークが認められてしまい、「UDONは日本の知的財産として海外で認定されずに、固有の商標である」という事例が残ってしまいます。

今後、日本のラーメンや寿司、餃子、日本酒といった食文化が海外に輸出されて日本の経済活性化が期待されるところに、同じように「それ、もうここの国では商標登録されてるから、その名前使っちゃダメです」と名前が使えないとなると、日本の食に携わる企業を筆頭としてダメージになる事が想定できます。日本の国際競争力に大きく影響しかねません。

ミラノ万博

JETROや農水省といった国の機関がこのリスクを把握し、今後この問題にどう対応していくか、注視してゆきたいと思います。

同時に、保育園落ちたムーブメントではありませんが、こうしたブログ記事やニュース記事などを大きく取り上げることで、より多くの方の目に触れ、問題があるべき方向へ改善されることを強く期待しています。

 

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コメント

  1. お節介おばさん より:

    実に嘆かわしいですね。
    うちの近所にも「日本食」もどきを出してる店があっって、「Tonkatsu」という名でチョーまずい焼きうどんにカツを載っけたのを売っています。そのメニューの説明には、”tonkatsu de pollo” 。オイオイ、トンカツって言ってるのに pollo はないでしょ、とツッコミたくなります。

    横ですが、「かしわそば」の「かしわ」は柏市のことじゃなくて、東海地方では鶏肉のことを「かしわ」と呼びます。
    あと、「タンポポラーメン」ですが、これは1985年に公開された伊丹十三監督のラーメンにこだわった人達の映画「タンポポ」にあやかったのでしょう。当時海外で結構ヒットした映画です。

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